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「病気と免疫」

2017.04.17 未分類

免疫という言葉で何を連想されますか。
免疫は体内外からの生体への攻撃や異常から防御したり制御したりする機能です。

人類の病気の最大の問題は感染症でした。
今でも発展途上国の一部では乳幼児の感染症による死亡は少なくありません。
肺結核、AIDS、ウィルス性肝炎(からの肝がん)、子宮頸がん、胃がんなどの感染症による疾患はほぼ対策できるようになりました。

一方で免疫はがん細胞にも対処します。1日6千個ほどのがん細胞が体内で発生しますが通常は免疫がこれを外的と認知し攻撃・死滅させます。
高齢になって免疫がうまく働かなくなってがん細胞を外的と認識できなくなるのも発がんの一つのメカニズムです。

私は消化器外科医でした。胃がん、大腸がん、乳がん、肝がん、すい臓がんなどを手術し抗がん剤、放射線治療も行ってきました。
大学病院ではそれ以外に研究もすることになりますが、私の研究課題はがん免疫治療でした。
高齢などの理由でがん細胞を外敵と認識できなくなって攻撃をやめてしまったり、がん細胞が正常細胞になりすましたり、がんが進行して免疫が弱ったりする現象に対して治療を施し、本来の免疫が持っているがんを攻撃する能力を回復したり増強する治療です。

理論的には理にかなった治療で、しかも副作用が少ないのが特徴です。
しかしながら、長年の間がん免疫治療は効果が薄く評価されていませんでした。

がん治療の効果判定の最も重要視される腫瘍の縮小効果が認めにくいことが原因です。効果としては若干の延命効果がある程度でした。

生体の免疫力を上げてがんを攻撃しやすくしたり、がんが免疫細胞に外敵と認識されやすくしたりするためのポイントは分かっていたのですが、実際にがん細胞だけ攻撃したり、がん細胞ひとつひとつの遺伝子やがん細胞表面の抗原(がん細胞であるという標識)の状態を変える方法がなかったのです。

従ってがん免疫治療は理論先行の治療という認識をされてしまっていました。

しかし近年になってハーセプチン(乳がん)、オプジーボ(肺がん)など内服や注射の治療で目覚ましい効果が出るようになってきました。
ただし開発研究に多大な費用が掛かっているために年間数百万円から数千万円にもなるコストが問題になってはいます。

残念ながら私が携わった免疫治療の方法は日の目を見ませんでしたが、免疫治療を研究した者にとってはうれしい進歩ではあると思っています。