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脳腫瘍って、どんな病気?

2019.08.25 ガン 人間ドック 医学一般

【三遊亭円楽さん、脳腫瘍が発見される】

脳腫瘍のため療養中だった落語家の三遊亭円楽さん(69歳)が、8月11日に国立演芸場・8月中席で高座復帰をはたされました。
お客様に病状を自ら説明したのち、40分間もの熱演を見せたという円楽さん。この日は入院中の病院から一時外出しての高座だったといいます。

円楽さんによれば、今年の5月末から自覚症状が現れたといいます。日常会話はできるのに、落語のあらすじがわからない。噺がいったりきたりする。6月の北海道公演で、これらの症状をはっきりと感じとったそうです。
そして、7月中旬にMRI(磁気共鳴画像)検査を受け、脳腫瘍が見つかり、緊急入院することになりました。

【良性と悪性の違いとは?】

脳腫瘍とは、どのような病気でしょうか。
そのことを知る前に、まずは脳についてお話ししましょう。

ご存じのとおり、脳は、頭蓋骨に覆われ、外からの刺激から守られています。このなかで、髄膜(ずいまく)に包まれた髄液(ずいえき)という液体のなかに、脳はあります。

脳の部位は、大脳、小脳、脳幹(のうかん)、脊髄という4つに大きくわけられます。これらは「脳実質(のうじっしつ)」といいます。

脳を覆っている髄膜や脳神経などは、「脳実質外」と呼ばれます。

脳腫瘍は、脳のなかにできる「できもの(腫瘍)」の総称。
大きくは、「原発性脳腫瘍」と「転移性脳腫瘍」の2つのタイプにわけられます。

原発性脳腫瘍は、脳のなかにある正常な細胞が腫瘍となってしまったものをいいます。

原発性脳腫瘍は、細かく分類すると150種類以上あるとされていますが、脳実質内腫瘍と脳実質外腫瘍の2つに大別できます。

また、原発性腫瘍は、良性と悪性にわけて考えられます。
良性とされるのは、増殖するスピードがゆっくりで、主に脳実質外の組織にできる腫瘍。正常組織との境界が明らかであることも、良性の特徴です。
一方、悪性とされるのは、増殖のスピードが速く、主に脳実質にできる腫瘍。まわりの組織にしみ込んでいくように広がり(「浸潤〈しんじゅん〉」という)、正常な組織との境がはっきりしないという特徴があります。

一般には、脳実質内腫瘍は、脳をつくる組織や細胞が腫瘍化しているため、手術ですべてをとりきることが非常に難しいといえます。
反面、脳実質外腫瘍は、脳実質ではない部分にできる腫瘍であるため、手術で脳を傷つけずに患部をとり切ることが可能とされます。

脳実質内腫瘍には主に「神経膠腫(しんけいこうしゅ・グリオーマ)」「中枢神経系原発悪性リンパ腫」「髄芽腫(ずいがしゅ)」「頭蓋内胚細胞腫(ずがいないはいさいぼうしゅ)」などがあります。

脳実質外腫瘍には主に「髄膜腫(ずいまくしゅ)」「下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)」「聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)」「頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)」などがあります。

さらに、脳腫瘍には「転移性腫瘍」があります。
脳以外の臓器にある悪性腫瘍、つまりがんが脳へ転移したタイプの脳腫瘍です。
この転移性脳腫瘍の生じるおよそ半数が、肺がんの転移と報告されています。

今回、円楽さんは良性か悪性かを公表しておらず、転移性腫瘍か否かはわかりませんが(8月12日現在)、昨年10月に初期の肺がんを克服されたことは記憶に新しいところです(一人のファンとしては、肺がんとは無関係であることを心から願うばかりです)

他にも、乳がんや大腸がん、頭頚部がん、膀胱がん、子宮がんからの転移もよく見られます。
脳腫瘍が発見されたのち、全身を検査したところ、他臓器からの転移だったとわかることもめずらしくありません。

【吐き気や頭痛、意識障害などが表れる】

脳腫瘍が生じると、どのような症状を自覚するでしょうか。

たとえば、皮膚に腫れ物ができると、ぷっくりと膨らみます。悪化すれば、そのふくらみも大きくなります。
脳腫瘍ができた場合も、腫瘍のまわりにはむくみが起こります。

ただし、脳は、硬い頭蓋骨によって覆われています。それゆえに、脳に腫瘍ができて周囲がむくんでしまっても逃げ場がなく、脳のなかでの圧力が徐々に高まります。それが吐き気や頭痛、意識障害などの症状になって現れます。
とくに、頭蓋骨のなかの圧力は睡眠中にやや高くなる傾向があるため、朝の起床後に頭の痛みや吐き気が強く引き起こされることがあります。

さらに、脳腫瘍ができた部位によって、特徴的な症状が現れます。
簡単に、腫瘍が生じた部位によってどのような自覚症状が現れるのか、主な部位別による特徴的な症状の一例を紹介しておきましょう。

◎前頭葉……片側の運動麻痺、言葉をうまく話せない、性格の変化、認知機能の低下など
◎側頭葉……言葉の理解が難しい、言葉のいい間違いをする、視覚障害など
◎頭頂葉……読み書きができない、計算ができない、左右の判断ができない、感覚障害など
◎後頭葉……腫瘍と反対側の視野が欠けてしまうなど
◎脳幹………運動麻痺、感覚障害、顔面神経麻痺、嚥下障害、物が二重に見えるなど
◎小脳………めまい、ふらつき、歩行障害、運動障害など
◎脳神経……目の動きが悪い、物が二重に見える、顔のしびれ、聴力低下、めまいなど

これらの症状は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳卒中の症状とよく似ているところがあります。
主な違いは、症状の現れ方。脳卒中は、急激に症状が起こります。
脳腫瘍は、進行のスピードには個人差がありますが、自覚症状が現れてからだいたい数週間ほどかけていっきに進行していきます。
なお、三遊亭円楽さんの腫瘍は、左の前頭葉にできていて、大きさは2~3センチほどだったとのことです。

【完治の向けては早期発見が重要】

米国の統計によれば、脳腫瘍と新たに診断される人は、年間10万人に20人とされています。数の少ない病気ですが、決してめずらしいとはいえない病気でもあります。
好発年齢は40~50代。働き盛りに多くなります。

脳という治療の難しい部位に腫瘍ができてしまうため、診断されると、「なぜ、こんなことになってしまったのか」「自分の何が悪かったのか」と悔やんでしまう患者さんが多くみられます。
しかし、脳腫瘍の原因は明らかになっていません。何か特別な原因があって発症するような病気ではないということです。

それだけに、完治に向けては早期発見が重要になります。

最近は、脳ドックの普及によって無症状のうちに発見される割合が増えてきています。
脳腫瘍は、頭部CT(コンピュータ断層撮影法)やMRIによってほぼ診断が可能です。また、頭部MRIやMRA(磁気共鳴血管撮影法)などを使った脳ドックを受ければ、さらに詳細な頭部の情報を得ることもできます。

これらの画像診断によって脳腫瘍の状態を調べたのち、腫瘍摘出術や生検術などの手術で腫瘍細胞をとり出し、どのタイプの腫瘍か確定診断を行います。これによって、治療方針が細かく決められます。

良性腫瘍であれば手術後の治療が必要ないケースも多くなりますが、悪性腫瘍の場合、手術後の抗がん剤治療や放射線治療などを行っていくことになるでしょう。
腫瘍が小さいうちに発見できれば、これらの治療を行いやすくなることがめずらしくありません。
なお、良性腫瘍が無症状で見つかった場合、腫瘍の大きさと発生部位によっては、そのまま経過観察のみですむこともあります。

なお、脳腫瘍を予防するにはどうすればよいのでしょうか。
すべての健康法に共通することですが、禁煙、お酒を飲みすぎない、バランスのよい食事、運動、肥満を防ぐことが大事とされています。

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