壮絶だったC型肝炎との闘い② - 治療 -
医師 若杉慎司
現在肝がん死はがん死の第5位を占めます。
多くはC型肝炎からで、前述のように肝炎治療が進んでいているのでこれからは発症、がん死ともに減少することでしょう。
●がん死亡数予測(2020年)
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C型肝炎を発症して慢性肝炎になって10年以上経つと肝硬変になりまた10年ほどで肝がんを発症することになります。
ここでいう肝がんは大腸がんや膵がんからの転移性のものではなく原発性の肝細胞がんを指します。肝硬変を経ないで直接慢性肝炎から肝がんになることもあります。
C型肝炎ウィルスの経口治療薬薬として2014年にソバルディ、2015年にハーボニー、2017年にマヴィレット配合錠、2019年にエプクルーサ配合錠が使えるようになってインターフェロンに頼らず、なおかつ飛躍的に優れた抗ウィルス効果が実現されました。多くの症例でウィルスは消失しています。
それらの治療によって今では発症は少なくなりましたが、外来で慢性肝炎で通院していただいている患者さんはいつでも肝硬変や肝がん発症する可能性がありますから、定期的に腹部超音波や腹部造影CTを施行します。
発症が分かったら患者さんの状態によって治療法を選択します。
肝がんの治療はまず肝機能障害の程度によって分かれます。障害が高度(C)な場合は肝移植や緩和療法が選択されます。
障害が軽度から中程度(A,B)の場合は、治療法は腫瘍の個数によって変わります。
また腫瘍の大きさでも治療の組み合わせが決まります。
ここでいう局所療法というのは体表から腫瘍に向かって針を刺しラジオ波やマイクロ波、液体窒素での冷却をするものです。
塞栓療法とは、足の付け根から動脈にカテーテルという管を挿入し、肝臓の腫瘍近くに到達したら腫瘍に栄養を送っている動脈に血管を詰まらせる物質を注入して兵糧攻めにするものです。同じようにしてカテーテルから直接抗がん剤を投与することもあります。
切除の手術においては肝臓には静脈、動脈、胆管が網の目のように走っており、なおかつ柔らかく出血しやすい臓器なので手術は術者のスキルを要しますし、手術時間は2時間から7時間と大きい手術となります。
肝がんの5年生存率は35、6%と比較的低い部類になります。肝硬変を合併していたり再発が多いためです。
人間ドックや健診では必ずB,C肝炎ウィルスはチェックされます。陽性の場合簡単な追加検査で今後発症するか他へ感染させる可能性があるかがわかります。
多くはありませんが成人になってから感染することがあります。
肝機能障害を指摘されて肝炎ウィルスが陽性になっていたら直ちに消化器科での通院を始め定期的に肝機能を検査しましょう。
現在は治療も診断も格段に進歩していますので、通院して必要な治療を受けていれば肝硬変や肝がんに進行することはほぼ完全に予防することができます。