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口内炎と間違いやすい舌がんとは?  

2019.05.12 ガン タバコ 人間ドック

【舌がんと口内炎の見分け方】

女優でタレントの堀ちえみさん(52)が、舌がんを患っていると公表しました。

現在は手術を無事に終え、リハビリをがんばっている様子が自身のブログにつづられています。大変な状況のなか、家族のため懸命に闘病を続けられる姿に励まされる方は多いでしょう。一日も早い回復を心よりお祈りいたします。

舌がんとはどのようながんでしょうか。

口の中に発生するがんは総称して「口腔がん」と呼ばれます。年間に約6000人が発症し、残念ながらその半数が命を失っています。

ただ、がんのなかでも罹患数としては少ないほうで、全体の約2~4%です。

口腔がんには、舌にできる「舌がん」のほかに「歯肉がん」「口腔底がん」「頬粘膜がん」などがあります。このうちもっとも多いのが舌がんで、口腔がんの50~60%を占めます。

舌がんのできる位置は、ベーッと舌を出して鏡に見える範囲の舌や、舌の縁、舌の下の面になどです。初期の症状は口内炎とよく似ています。堀ちえみさんも、口内炎と思っていて、歯科医院でその治療を受け、発見が遅れたことを公表しています。

口腔がんになる前段階には「白板症(はくばんしょう)」が見られます。口の粘膜が白色に変化する症状です。口内炎によく似ていますが、痛みをともなわないこともあります。

口内炎のように一部分のみに生じているケースがある一方、口腔内全体に広がっているケースもあります。

この白板症のうちの約10%ががん化するとみられています。
なお、白板症に赤色が混ざってくると、がん化が強く疑われます。

一方、「紅板症(こうばんしょう)」という病変は、約50パーセントががん化するとされます。鮮やかな赤色のビロード状、表面はなめらかな病変です。多くの場合、刺激痛が生じます。

ほかにも、舌から出血が起こる、しこりや潰瘍ができる、顎が腫れる、舌にしびれや麻痺が起こる、噛みにくい、舌を動かしにくいなどの症状が現れた際にも、がんの疑いが考えらえます。

こうした場合にも、専門医に速やかに相談することです。口腔がんの専門は、耳鼻咽喉科か口腔外科になります。

舌がんの最大の特徴は、「自分の目で見ることのできるがん」であることでしょう。目で確認でき、自覚症状もあるため、自分で早期発見しやすいがんなのです。

とはいえ、白板症、紅板症とも病変がまだ小さなうちは口内炎との判別が難しいのも事実です。口内炎は直径数ミリ程度の円形の浅い潰瘍で、周囲が赤くなっています。がんがごく初期のうちは、専門医でも見た目だけで判断するのは難しいものです。

では、口内炎とがんをどのように見わければよいでしょうか。

最大のポイントは、「2週間以上症状が続いているかどうか」です。

口内炎は1週間から10日間でよくなります。2週間以上続く場合は、口内炎でないことが疑われます。つまり、口内炎以外の病気の可能性が考えられるということです。

「口内炎かな」と思っても、2週間以上続く場合には、専門医をなるべく早く受診し、状況を説明しましょう。
また、歯磨きのあとなどには、変わった部分がないか、口のなかを定期的にチェックすることも大事です。

なお、口のなかの病変部ががんか否かを調べるには、組織を一部とって顕微鏡でみる病理検査を行うことになります。

【舌がんを防ぐには】

舌がんが見つかった場合、患部を切除する手術が行われることになります。

舌は多くの働きを持っています。

味を感じ、食べものを噛むのを助け、飲み込むために使われます。そのため、舌の働きがにぶると、食べることが満足にできなくなります。

呼吸にも舌が必要です。

さらに、声を発する際にも舌は働きます。舌がなければ、発音が難しくなります。
つまり、舌とは「食べる」「呼吸をする」「話す」という活動を支える重要な臓器なのです。

がんを早期に発見できれば、切除する部分も浅く小さくてすみます。切除範囲が小さければ、局所麻酔にて手術もでき、入院日数も短くてすみます。舌の形は多少変形しますが、食事や会話などに問題を残さずにすみます。味覚障害も起こりません。

「口内炎とは違う」という疑わしい病変が起こっていても、「大丈夫。いずれ治るだろう」と放置してしまう人がいます。不安が募り、病院に足がなかなか向かないという人もいるでしょう。お気持ちは十分にわかります。

でも、早期に発見できるかどうかで、予後はまるで違ってきます。

発見が遅くなり、患部が深く広がってしまうと、がんのある部分を大きく切除することになります。

切除後の欠損部は、さまざまな方法で再建されます。堀さんの場合は、大腿部の筋肉をもってきて、舌を再建しています。再建された舌を働かせるためには、大変なリハビリを行うことにもなります。

さらに患部が大きく広がれば、舌をすべて摘出することになります。

切除部分が大きくなるほど、嚥下障害や構音障害、味覚障害など多くの問題を残してしまいます。しかも、リンパ節や周辺の組織に転移する可能性も高まってしまうのです。

舌がんの好発年齢は50代後半とされます。ただ、50歳未満の患者さんも約4分の1を占め、20~30代の若年層に発症することもあります。どの年齢層であっても油断はできません。

原因は明らかになってはいませんが、喫煙や飲酒などによる慢性的な刺激が一因になると考えられています。また、歯並びが悪く、歯が常時当たる刺激が原因になることもあります。

口のなかの衛生状態が悪かったり、虫歯や義歯、口の乾燥などで舌がたえず刺激されたりということも、誘因になります。

さらに、熱い食べものや辛い食べもの、刺激の強い食べものなどによる刺激も関与しているとみられます。
こうした刺激は、口のなかの粘膜細胞を傷つけ、細胞の遺伝子をがん化させやすくするのです。

口腔がんを防ぐためには、こうした刺激を口内の粘膜に与えないよう、口のなかをふだんから整えていくことも大事といえるでしょう。

具体的には、「禁煙をする」「お酒を飲みすぎない」「しっかり歯磨きをし、口内を清潔に保つ」「唾液がしっかり出るよう、よく噛んで食べる」「虫歯を治す」「かかりつけの歯科医に入れ歯の点検を定期的にしてもらい、あわないままにしない」「熱いもの、辛いもの、刺激の強いものを食べすぎない」などです。

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