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ストレスの多い日々が 心臓に大きな負担を与えている

2019.10.04 メタボリック・シンドローム 人間ドック

【心臓はストレスに弱い臓器】

元バレーボール日本代表の益子直美さんが、約3年前の50歳のとき、心房細動で手術を受けていた、との記事を先日読みました。

1980年代後半から90年代前半、力強いプレーとボーイッシュな姿で女子バレー人気を押し上げていた益子さん。当時、医師として手術に明け暮れていた私には、「とてもタフで健康的な女性」とイメージされていました。ですから、今回の報道には、少々の驚きを感じました。

記事によれば、部活を始めた中学1年生から引退した25歳まで、ストレス性の下痢が続いていたという益子さん。

引退後は、大学バレーボールの監督、バレーボールの解説やリポーター、芸能界などの仕事をされていました。プレッシャーやストレスを感じる日々は続き、片頭痛がひどく、そのために吐き気をもよおすこともあったそうです。

一流バレーボール選手として、たぐいまれな身体能力を持っていたことでしょう。しかし、健康な人の体にも、過度なストレスは悪影響を強く与えてしまいます。

益子さんの心臓は、厳しい練習と過度のストレスに大きな負担を感じていたのでしょう。

心臓は、ストレスに弱い、という性質を持つ臓器の一つです。

心房細動には3つの種類があります。

1、交感神経緊張型

発作は日中に多く、運動、緊張、ストレスで起きやすいことが分かっています。

2、副交感神経緊張型

 睡眠、安静、食後、飲酒後で起きやすくなります。60歳以下の男性に多い。

3、混合型

益子さんは、運動やストレスが原因の交感神経緊張型と思われます。

一生のうち4人に1人は心房細動になるといわれています。意外に身近な病気といえますね。

【「年齢のせい」と思っていませんか?】

心臓は、全身の血管に血液を送るポンプの役割をしています。大きさは、人の握りこぶしよりやや大きい程度で、そのほとんどが筋肉です。

心臓の内部は、4つの部屋と4つの弁から成り立ちます。その4つの部屋のうち、上のほうにある2つの部屋を心房、下の2つを心室といいます。心房は、血液が入ってくる部屋で、心室が血液を送り出す部屋です。

心臓の動きは、内部でつくり出される電気信号によってコントロールされ、その電気信号がポンプの力で全身に血液を送り出すという規則正しいリズムをつくっています。

この電気信号が乱れて、心臓のリズムが不規則になる状態を不整脈といいます。

益子さんが発病された心房細動は、心房で異常な電気的興奮が起こって生じる不整脈。これが起こると、心房が痙攣しているように不規則に震え、脈が乱れることになります。

この状態が起こると、動悸や息苦しさ、胸部の不快感、運動時の強い疲労、めまいなどが生じ、重篤な場合は意識を失うこともあります。

益子さんも最初に発作を自覚したとき、心拍数が上がり、息苦しさと意識が遠のく感じを覚えたといいます。

心房細動は、それによって急死するような疾患ではありません。

ただし、放置するのは危険です。心房内で血液がよどんでしまうため、血の塊である「血栓」ができやすくなるからです。

その血栓が血流にのって脳に運ばれると、脳の血管を塞ぐ「脳梗塞」が生じます。生命にかかわり、助かったとしても障害を残しやすい病気です。

心房細胞があると、脳梗塞を起こすリスクは格段に高くなると報告されています。

ところが、一般には心房細動に気づいていない人が多いのです。

心房細動は、発作の続く期間から「発作性」「持続性」「長期持続性」と分類されています。

発作性心房細動は、発症から7日以内に正常な脈に戻るタイプ、持続性は7日以上、長期持続性は1年以上、不整脈が続くタイプです。

心房細胞の大半が発作性ですが、この場合、心臓に異常があることに気づきにくいという点があります。脈の乱れや胸の痛みなどを感じても、少し休めば発作が収まるからです。心房細動の患者さんの約半数が自覚していないとも報告されています。

しかし、これを放置すれば、持続性心房細動や長期持続性心房細動へと進んでいき、脳梗塞などの塞栓症を起こすリスクが高くなります。

また、脳梗塞を起こしてから、心房細動が生じていたことに気づくケースも少なくないのです。

実は、心臓病は、早期発見の難しいとされている病気の一つです。軽症のうちは、はっきりと症状が現れなことが多いからです。

加齢とともに心臓病のリスクは高まりますが、息が切れる、疲れやすいなどの症状が現れても、「年齢のせい」と思い込んでしまいやすいのです。

そうして、本人の気づかないまま進行し、重症化するケースが非常に多いといえるでしょう。

【早期発見が健康長寿に欠かせない】

心臓は、私たちの生命の要となる臓器です。健康長寿のためには、軽症のうちに専門機関を受診し、治療を受ける必要があります。

そのためには、早期発見が必要となります。人間ドックも有効です。

心電図や胸部レントゲンなどによって、不整脈を見つけることができます。

ただ、ごく初期の段階の発作性心房細動の場合、検査時に発作が生じていないと、発見できないこともあります。

もしも心臓の動きに心配なことがあるならば、心エコー、CTやMRIなどを使って心臓の高度画像検査を行える医療機関を受診するとよいと思います。

心臓の働きやつまり具合を立体的に診断できるので、自覚症状のない心臓病の予兆も発見できるようになってきています。

【東洋人の心臓はストレスに弱い】

心臓病は、予防も大事です。とくに大事なのは、ストレスを軽減すること。

心臓は「心の臓」と書きますが、心臓の動きと心の状態は密接に関係しています。

精神的要因によって、心臓病を発症したり、悪化したりしやすくなるのは事実です。精神的要因が心臓病の発症に関係していることは、多くの研究によっても明らかにされています。

実際、急性心筋梗塞と精神的ストレスの関連を52か国で調査した国際研究の結果、社会的なストレスや抑うつ症状のある人は、それがない人に比べて、1.55倍も心筋梗塞になりやすいことがわかったのです。

さらに、抑うつ症状があると心筋梗塞をどれだけ起こしやすいかを民族別で調べたところ、抑うつ症状がない場合に比べ、東洋人(中国人)では2.08倍、ヨーロッパ人では1.37倍でした。

東洋人のほうが、ヨーロッパ人より、抑うつ状態が心臓に悪影響をおよぼしやすいことを表している、と考えられます。

現代の生活では、私たちの心身は、さまざまな場面でストレスを重く感じることが多くなっています。生活のため、自分のため、家族のため、仕事のため、避けられない精神的負担もありますが、それはすべて自分自身が健康であってこそ成り立つことです。

益子さんは45歳のとき、東京から神川県湘南に引っ越してから、片頭痛の発作が減ったそうです。自然を感じながら生活できる環境で、自分のペースで暮らせるようになったことが功を奏したのでしょう。

私も、ストレスを感じさせるところからは、できるならば、一時的にしろ遠のくことも大事と思います。それは「逃げる」のではなく、「大切な心臓を守る」という選択です。

さらに、ストレスは、人によって感じ方が異なるのも事実。

ストレスへの耐性を高めるには、第一に規則正しい生活が大事。とくに睡眠は重要です。睡眠時間を削ってしまうという判断は、寿命を縮める原因にもなります。

第二に、食事が大事。できる限り、素材の味を感じられる程度の味つけを心がけ、暴飲暴食は控えましょう。

第三に、運動。心拍数が急激に上がるような激しい運動は心臓に与える負担が大きくなりますが、適度な運動は心臓を丈夫にするためにも重要です。

朝、少し早起きして散歩に出かける、外出するときには徒歩を心がける、ラジオ体操を毎日するといった軽度の運動でも十分です。

生活の中に無理のない範囲で運動を取り入れていきましょう。

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