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原因はアルコールだけではない!食べすぎも肝臓病の原因に

2019.11.07 お知らせ グルメ ダイエット メタボリック・シンドローム 人間ドック

【お酒を飲む人は、年に一度は人間ドックを】
お酒を飲む人にとって気になる臓器といえば、肝臓。肝臓の状態は、内臓のなかで、もっともわかりにくいものの一つです。病変が生じていたとしても、ある程度進行してからでないと自覚症状が現れないことが多いためです。肝臓は障害に耐える力が強いのです。
そのため、肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれています。
お酒を飲む人はとくに1年に1度は人間ドックを受け、肝臓の状態を確認しましょう。症状が現れてからでは、病気が進行していて治療が難しくなるケースが多くなってしまうからです。

【肝臓の病気は段階的に進行していく】

肝臓の病気は、ひとくくりに「肝臓病」と呼ばれます。そこには、大きく肝炎、肝硬変、肝がんがあります。

肝炎は、その名のとおり、肝臓の炎症のこと。ウイルス感染、アルコールの摂取、肥満などが原因し、肝細胞が壊れることで起こります。
このうち、6か月以内に病状が落ち着くものを急性肝炎、それ以上続くケースを慢性肝炎と呼びます。ただし、慢性肝炎になったからといって、症状が軽ければ「肝臓に異変がある」とは自分では気づけないでしょう。倦怠感や食欲不振、疲労感などが多く見られますが、症状が漠然としていてわかりにくいのです。

だからといって、慢性肝炎を放置してしまったら、どうなるでしょうか。
肝細胞が再生する力を失い、肝臓に線維が蓄積して、硬くなってきます。肝臓の働きも低下します。この状態を「肝硬変」と呼びます。

では、肝炎を早期に発見するには、何が必要でしょう。
血液検査を受け、「GOT(AST)」「GTP(ALT)」「ガンマGTP」の値を見ることです。これらは肝臓で働く酵素の名前です。

GOTとGTPは肝細胞のなかにあって、肝炎になって肝細胞が壊れると血液中に流れ出します。そのため、肝炎があると、この2つの数値が高くなります。
一方、ガンマGTPは肝細胞や胆管(胆汁の通り道)に多く存在してます。
この3つの数値が高いということは、肝臓に炎症が起こっていて、肝機能が低下していることを表しています。

【黄疸が出ていたら、肝硬変の疑いも】

肝炎によって破壊された肝細胞は、やがて再生されます。
しかし、肝炎が長期化して破壊と再生がくり返し行われると、肝臓が硬く、表面がデコボコしてきます。
肝細胞の破壊と再生がくり返されたことにより、肝臓が線維化するためです。この状態が「肝硬変」です。

肝硬変にまで症状が進行すると、いくつかの象徴的な症状が現れます。
たとえば、身体が黄色くなる「黄疸」が現れます。胸に、クモの巣のような血管が放射状に浮き出てくることもあります。これを「クモ状血管腫」といいます。手のひらが赤くなる「手掌紅斑」が起こることもあります。
血液検査では、肝臓でつくられるアルブミン(たんぱく質の一種)の値の低下や、血小板の減少などが現れます
さらに悪化すれば、さまざまな合併症を起こすことになっていきます。

【肝がんの予防には年1度の腹部エコーを】

肝がんは、B型肝炎やC型肝炎の人にが起こりやすいというイメージを持つ人は多いでしょう。しかし、肝がんの原因の約10パーセントはアルコールとされています。

肝がんは、慢性肝炎や肝硬変のある肝臓に発生しやすくなります。ただ、腫瘍が小さなうちは、症状はあまり現れません。痛みなどの症状が現れるのは、がんが進行し、腫瘍が大きくなってきてからです。
ですから、慢性肝炎や肝硬変があるとわかった場合は、肝がんはないと診断されていても、腹部超音波検査(腹部エコー)などを1年に1度は受けておくようにしましょう。

現在、肝臓がんは、全がんのうち男性で5番目に多いがんです。女性は、乳がんや子宮がんなど女性特有のがんが多いものの、高齢になると肝臓がんの罹患率が高くなります。なお、肝臓がんで亡くなる人は、年間で約1万8000人にのぼっています。

【食べすぎが脂肪肝を引き起こす】

最近は、アルコールを飲まない人にも、肝臓の病気が多くなってきています。
この場合、過食が原因です。「食欲の秋」がやってきました。おいしい食べ物が私たちのまわりにはあふれています。でも、食べすぎは命を縮めます。中性脂肪が肝臓にたまってしまうからです。この状態を脂肪肝といいます。
脂肪肝とは、たとえてみれば、肝臓がフォアグラのように脂をたっぷりと蓄えてしまう状態のことです。

脂肪肝になると、肝臓の病気を引き起こすリスクが高まります。
肝臓には、「有害物質の解毒と分解」「食べ物の消化に必要な胆汁の合成・分泌」のほかに、「たんぱくの合成や栄養の貯蔵」などの働きがあります。
食事からとった脂質は脂肪酸に、糖質はブドウ糖に、小腸で分解されたのちに体内に吸収されます。そして、エネルギー源として消費されなかったぶんの多くは、肝臓で中性脂肪に変換され、肝臓に蓄積されるのです。この中性脂肪の蓄積量が多くなった状態が、脂肪肝です。

今、日本人の4人に1人が脂肪肝と推計されています。肝硬変などに進行させないためには、脂肪肝は早めに改善していく必要があるでしょう。
そのために必要なのが食生活の改善です。体重を2キロ減らすだけでも、中性脂肪を減らして、肝機能を回復させていくことができます。

【肝臓病のリスクは自分で減らせる】

肝臓の病気を防ぐには、食生活の改善が大事です。
まず必要なのは、お酒の飲みすぎに気をつけること。とくに、アルコールに強くないのに無理して飲んでいる人や、顔が赤くなりやすい人、もともと弱かったのに鍛えられて強くなった人などは、注意しましょう。もちろん、アルコールに強い人も、過度の飲酒は肝臓を傷つける危険性を高めます。
お酒の適量は、純アルコール換算で1日に約20グラムとされています。ビールで中ビン1本、ワインでボトル3分の1、ウイスキーでダブル1杯、日本酒で1合程度です。宴会などでそれ以上飲みすぎてしまった場合には、その後数日はお酒を控えるなどして、調節することです。

次に、食事の改善です。高エネルギーの食事は、肝臓に負担を与えます。肉類は脂肪を減らす食べ方を心がけ、ご飯やめん類のとりすぎにも注意しましょう。つい食べ過ぎてしまう、という人は、お茶碗を小さくするなどの工夫を行うことです。パスタやうどんなどのめん類にする際には、野菜などで具材を増やし、ボリュームをアップさせるとよいでしょう。

調理法を変えることも、有効な方法です。同じ肉を使って調理する場合でも、「揚げる→フライパンで炒める・焼く→煮る→蒸す→網焼き→ゆでる」の順で、エネルギー量を落としていくことができます。
さらに、野菜や海藻類、きのこなどをたっぷり食べましょう。これらに含まれる食物繊維には、脂質やコレステロールの吸収をゆっくりにし、肝臓に与える影響を軽減させる働きがあります。
こうした工夫をしながら、食事をおいしく整えていくことによって、肝臓の病気のリスクを自ら減らしていくことができるでしょう。

肝臓のチェックには血液検査でAST、ALT、ビリルビン、γ-GTPを測定したり、腹部超音波での検査が有用です。
メタボ気味や飲酒の多い方は年に一度これらの検査を受けましょう。

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